ガヴアナー成績
ガヴアナーの画像
画像提供 Wikimedia Commons
1932/3/9生 1935/5/28没
牡  黒鹿毛
父:シアンモア 母:アストラル (by チヤペルブラムブトン)
生産者:岩手・小岩井農場(JPN)
馬主:高橋錬逸氏
調教師:布施季三(阪神)

・中央所属時成績
四歳時 3戦 3勝 東京優駿
中央通算 3戦 3勝
全通算 3戦 3勝
[解 説]当Web siteでは漢数字の馬齢は旧年齢表記、算用数字の馬齢は満年齢表記
 ガヴァアナーは1932年3月9日、岩手の小岩井農場で生まれた。ガヴアナーの血統をわかりやすく説明すると、第2回ダービー馬カブトヤマの全弟ということだ。父シアンモアは小岩井農場がイギリスから輸入した種牡馬で、下総御料牧場のトウルヌソルと双璧をなす、戦前の日本競馬を支えた大種牡馬である。母アストラルは父チェペルブラムプトン、母種義で大正時代の1921年に下総御料牧場で生まれた。種義は小岩井牧場の繁殖牝馬でその弟のハヨシは帝室御賞典を制している。アストラルの直仔は前述のカブトヤマの他、ガヴアナーの弟となるロツキーモアーも帝室御賞典を制している。子孫としてはチエリオ、マツカゼオー、ニッポーテイオータレンティドガールらがいる。
 このカブトヤマの黒鹿毛の弟は日魯漁業や日清製粉などの監査役を務めた高橋錬逸氏の持ち馬となってガヴァアナーと名付けられた。早くから尾方景造師も注目していたため、競り値がつり上がり、岩崎彦弥太氏、小池厚之助氏と共同で所有することになった。布施孝三厩舎に入厩したガヴァアナーは、四歳となった1935年3月30日、中山の新呼馬競走で初出走した。井川為男騎手を鞍上にフソウ以下に4馬身差をつける快勝。続く4月14日の中山の優勝戦も4馬身差の快勝。2戦連続で1番人気に応えた。
 第4回日本ダービーは天長節となる4月29日雨・不良馬場の東京競馬場で開催された。1番人気は四歳にして帝室御賞典を制した牝馬クレオパトラトマスであった。いわばダービーの前に天皇賞に勝ってしまう牝馬が出走していては、快進撃のガヴアナーでも2番人気に甘んじるしかなかった。クレオパトラトマスはスタートで後手を踏んだ上に、道悪に苦しみ9着に惨敗してしまった。それに対してガヴアナーは好位から抜け出し、アカイシダケに6馬身差をつけるレコードタイムで優勝。カブトヤマとともに史上初のダービーを兄弟で制した。また初めての無敗のダービー馬でもあった。敗れたクレオパトラトマスではあったが、弟のクモハタがダービーを制し、また孫のハクチカラがダービー、天皇賞、有馬記念に加えて史上初のアメリカで重賞勝利を成し遂げた。
 無敗のダービー馬として前途を大きく期待されたガヴアナーは、その後その運命を暗転させてしまう。ダービーの13日後の5月15日、調教中に左後脚を骨折し、安楽死の処置が執られた。競走成績は3戦3勝。初出走からわずか46日のことであった。ガヴアナーはダービーで現役生活を終えた最初の馬となり、同時に生涯無敗のダービー馬となった。ガヴアナーの死後、悲劇は続いた。ガヴアナーを担当した馬丁がその後ヘルムートという馬を担当したある日、馬に雨合羽を着せようとした時に、驚いたヘルムートに腹部を蹴られて腸破裂し亡くなってしまったのだ。
 全ての馬の最大目標であるダービーに優勝した馬は、故障が判明すれば無理をせずに引退させる場合が多い。したがってダービーが生涯最後のレースだったという馬は少なくない。また死力をつくすサラブレッドにとっては現役中に亡くなることもまた珍しいものではない。しかし無敗のままダービーで競走生活を終えた馬は昭和ではその後トキノミノルだけで、平成では皆無だった。ガヴアナーの勝ったダービーは動画が残されておらず、我々はその勇姿は数枚の写真で確認するのみだ。悲劇的な生涯を迎えたガヴアナー。しかしもし無事だったらクモハタを越える馬になったかもしれない。そうした夢を馳せるのもまた競馬なのである。
2023年7月23日筆
競走成績
日付 競馬場 競走名 距離 馬場 頭数 人気 着順 時計 騎手 斤量 1着馬(2着馬)
1935/3/30 中山 新呼 2000 3 1 1 2:14.3 井川為男 55 (フソウ)
1935/4/14 中山 優勝 2200 6 1 1 2:23.4 井川為男 55 (タマナギ)
1935/4/29 東京 東京優駿 2400 11 2 1 R2:42.1 井川為男 55 (アカイシダケ)
距離別実績
距離区分 1着 2着 3着 連対率 主な勝鞍
1400m未満 0.000
1400〜1900m未満 0.000
1900〜2200m未満 11001.000
2200〜2800m未満 22001.000 1935東京優駿
2800m以上 0.000
芝コース通算33001.000 
競馬場別実績
競馬場 1着 2着 3着 連対率 主な勝鞍
中山22001.000
東京11001.000 1935東京優駿
通算33001.000 

5代血統表
シアンモア
Shian Mor
1924 黒鹿
Buchan Sunstar Sundridge Amphion
Sierra
Doris Loved One
Lauretta
Hamoaze Torpoint Trenton
Doncaster Beauty
Maid of the Mist Cyllene
Sceptre
Orlass Orby Orme Ormonde
Angelica
Rhoda B. Hanover
Margerine
Simon Lass Simontault St.Simon
Datura
Kilkenny Lass Lesterlin
Standon Girl
アストラル
1921 栗
チャペルブラムプトン Beppo Marco Barcaldine
Novitiate
Pitti St.Frusquin
Florence
Mesquite Sainfoin Springfield
Sanda
St.Silave St.Serf
Golden Iris
種義 ダイヤモンドウェッディング Diamond Jubilee St.Simon
Perdita
Wedlock Wenlock
Cybele
ビューチフルドリーマー Enthusiast Sterling
Cherry Duchess
Reposo Amphion
Monotony
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