エルコンドルパサー成績
エルコンドルパサーの画像
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1995/3/17生 2002/7/16没
牡  黒鹿毛
父:Kingmambo 母:Saddlers Gal (by Sadler's Wells)
生産者:T.Watanabe(USA)
馬主:渡邊隆氏
調教師:二ノ宮敬宇(美浦)

・中央所属時成績
三歳時 1戦 1勝
四歳時 6戦 5勝 NHKマイルカップ ジャパンカップ
五歳時 4戦 2勝 サンクルー大賞典(FRA G1)
中央通算 11戦 8勝
全通算 11戦 8勝
[解 説]当HPでは漢数字の馬齢は旧年齢表記、算用数字の馬齢は満年齢表記
 エルコンドルパサーは1995年3月、アメリカのケンタッキーのレーンズエンド牧場にて生まれた。母サドラーズギャルはオーナーの渡邊隆氏がヨーロッパで購入したサドラーズウェルズ産駒で、レーンズエンド牧場はその預託先であった。父キングマンボはミスタープロスペクター産駒。ミスタープロスペクターはアメリカの歴史的名種牡馬でノーザンダンサー系とひと味違う鋭いスピードをその産駒に伝えている。エルコンドルパサーの血統上での特徴は血統表を見れば分かるとおり、同血クロスが複雑に絡み合った独特のインブリードから構成されていることである。これは渡邊オーナー自ら考えた配合で、生産者のT.Watanabe(USA)とは母馬所有者である彼自身のことである。
 美浦の二ノ宮敬宇厩舎に預けられ、1997年三歳東京秋開催でデビュー。ダートの新馬、四歳となった翌1998年の500万条件戦と圧勝し、この時点で早くも注目される存在となった。外国産馬でクラシックに出走権のないエルコンドルパサーは四歳春の目標としてNHKマイルカップを選んだ。その最初のステップとして選んだのは共同通信杯四歳Sであったが、折からの降雪でダートに変更されてしまい、芝へ適正は保留されたまま、このレースを圧勝。結局次のニュージーランドT四歳Sで芝での適正は証明され、さらに本番のNHKマイルカップでは4コーナーで外に膨れる不利があったものの、シンコウエドワード以下に完勝。デビュー以来5連勝で春シーズンを終える。
 休養中の夏、タイキシャトルがフランスのG1ジャックルマロワ賞を制するという快挙を成し遂げた。これは渡邊オーナーが密かに狙っていたレースで、二番煎じを避けるためには、タイキシャトルを上回るタイトル、世界最高の凱旋門賞に勝つしかないと判断し、エルコンドルパサーはマイルから中長距離へと路線変更を強いられることとなった。
 四歳秋の初戦は毎日王冠。このレースには強力なライバルが2頭いてエルコンドルパサーはデビュー以来初めて3番人気に落ちた。その2頭とはその年破竹の連勝を続け宝塚記念を制した快速特急サイレンススズカと、去年の三歳チャンピオンの驚異の怪物グラスワンダーである。これまでエルコンドルパサーには的場騎手が騎乗していたが、彼はグラスワンダーを選び、この後のレースには蛯名騎手が騎乗することになった。レースはサイレンススズカが見事な逃げ切り勝ちで、エルコンドルパサーは初めての敗戦を喫してしまう。しかし外によれながらも2着を確保し、グラスワンダーには大きく先着した。続いてのジャパンカップは未経験の2400mという距離とマイラー血統を嫌われて、スペシャルウィークエアグルーヴに次ぐ3番人気という評価であった。しかし結果はエアグルーヴ以下に2馬身半差をつけて圧勝。招待外国馬のレベルが少々落ちていたとはいえ、四歳の日本馬による勝利は史上初であった。この勝利が評価されて、二冠馬セイウンスカイを差し置いて最優秀四歳牡馬に選ばれた。
 五歳となったエルコンドルパサーは高額賞金の日本のレースには目もくれず、また短期滞在の場合にJRAから海外大レースの入着馬に支給される報奨金も無視して、フランスに長期滞在し環境に順応させた上で凱旋門賞を狙うことになった。4月にフランスに出発し現地のトニー・クラウト厩舎に預けられた。そして八分のデキで挑んだロンシャンのイスパーン賞(G1)だったが、クロコルージュの2着。しかし次走には十分期待のもてる内容であった。果たして次のサンクルー大賞典(国際G1)ではタイガーヒル以下欧州の強豪馬に対して圧勝。凱旋門賞有力馬にその名乗りを上げた。そして秋、凱旋門賞のステップレースとなったフォワ賞(仏G2)は有力馬が次々と回避して僅か3頭立て。しかしボルジアの追撃を振り切って快勝。一気に凱旋門賞制覇への期待が高まった。
 凱旋門賞前のロンシャンは記録的な長雨が続き、過去に例のないほどの不良馬場となった。パワーよりもスピードを身上とするエルコンドルパサーには不利な条件であったが、最大のライバルといわれたフランスの四歳馬モンジューは逆に不良馬場を得意としていた。かくしてエルコンドルパサーはモンジューに次ぐ2番人気に支持されて本番を迎える。エルコンドルパサーは最内枠から最高のスタートを切った。包まれるのを嫌って蛯名騎手は逃げ戦法にでた。そして最後の直線、エルコンドルパサーは欧州の強豪馬を引き離しにかかる。しかしエルコンドルパサーに襲いかかってきたのはやはりモンジューであった。必死に抵抗するエルコンドルパサーは差し返しにでたが半馬身までつめるのがやっとであった。凱旋門賞は2着となったエルコンドルパサーだが、極端に悪化した馬場、最内枠、3.5kgの斤量差、そして遠征馬の不利ということを考慮すれば、十二分に賞賛されるべき成績である。翌年年度代表馬に選出された。日本で一走もせずに選出されたのは史上初で、国内で活躍したグラスワンダースペシャルウィークが特別賞で表彰されたことは、一部の新聞記者から批判を浴び、翌年から選出方法が記者投票数を重視するようになった。
 凱旋門賞後は日本国内で出走せずそのまま引退、社台スタリオンにて種牡馬として供用された。しかし2002年7月腸捻転が原因でこの世を去った。種牡馬としては僅か3世代の産駒を残すことができなかったが、2006年に菊花賞でソングオブウインド、ジャパンカップダートでアロンダイトがG1を制した。またヴァーミリアンがフェブラリーSとジャパンCダートを含む交流G1を9勝するなど、繁殖成績も目を見張るものがあっただけに早逝は惜しまれた。
 11戦8勝2着3回で連対率100%。しかも4戦の欧州での成績を含めてというから恐れ入る。負けたレースにしても、毎日王冠はこの時点での最強馬サイレンススズカ相手であり、イスパーン賞は海外初戦、凱旋門賞は前述したように負けてなお強しの結果である。これだけの成績を残せたのは、渡邊オーナーの熱意と理解、調教スタッフの地道な努力の他に、何よりもエルコンドルパサー自身の強靱な精神力がそれをなし得たといえるだろう。過去の日本調教馬の中でも五指に入る名馬と断言できるが、顕彰馬選出投票においては同期のスペシャルウィークと記者投票数を分け合うことが多く、選出条件が満たされず、殿堂入りは叶わないでいた。2010年に凱旋門賞でナカヤマフェスタが優勝馬まで頭差に迫り、オルフェーヴルが2012年、2013年と連続2着した。もはや日本馬が凱旋門賞を征するのは時間の問題と言っても過言ではあるまい。このままでは海外への重い扉をこじ開けたエルコンドルパサーの功績が埋没してしまうと思われたところ、2014年にJRA創立60周年記念で記者投票数が1人4票となったため、エルコンドルパサーはついに顕彰馬に選出された。
1999年12月26日筆
2002年7月22日加筆
2007年1月14日加筆
2011年5月14日加筆
2014年5月3日加筆

競走成績
日付 競馬場 競走名 距離 馬場 頭数 人気 着順 時計 騎手 斤量 馬体重 1着馬(2着馬)
1997/11/8 東京 新馬 ダ1600 9 1 1 1:39.3 的場均 54 462 (マンダリンスター)
1998/1/11 中山 500万以下 ダ1800 13 1 1 1:52.3 的場均 55 478 (タイホウウンリュウ)
1998/2/15 東京 共同通信杯四歳ステークス ダ1600 9 1 1 1:36.9 的場均 55 478 (ハイパーナカヤマ)
1998/4/26 東京 ニュージーランドトロフィー四歳ステークス(G2) 1400 18 1 1 1:22.2 的場均 56 472 (スギノキューティー)
1998/5/17 東京 NHKマイルカップ(G1) 1600 17 1 1 1:33.7 的場均 57 470 (シンコウエドワード)
1998/10/11 東京 毎日王冠(G2) 1800 9 3 2 1:45.3 蛯名正義 57 470 サイレンススズカ
1998/11/29 東京 ジャパンカップ【GI】 2400 15 3 1 2:25.9 蛯名正義 55 472 (エアグルーヴ)
1999/5/23 Longchamp
(FRA)
イスパーン賞(仏G1) 1850 8 1 2 1:53.8 蛯名正義 58 --- クロコルージュCroco_Rouge
1999/7/4 Saint-Cloud
(FRA)
サンクルー大賞典【GI】 2400 10 2 1 2:28.8 蛯名正義 61 --- (タイガーヒルTiger_Hill)
1999/9/12 Longchamp
(FRA)
フォワ賞【GII】 2400 3 1 1 2:31.4 蛯名正義 58 --- (ボルジアBorgia)
1999/10/3 Longchamp
(FRA)
凱旋門賞【GI】 2400 14 2 2 2:38.6 蛯名正義 59.5 --- モンジューMontjeu
距離別実績
距離区分 1着 2着 3着 連対率 主な勝鞍
1400m未満 0.000
1400〜1900m未満 42201.000 1998NHKマイルカップ
ダート1400〜1900m未満 33001.000
1900〜2200m未満 0.000
2200〜2800m未満 43101.000 1998ジャパンカップ 1999サンクルー大賞典
2800m以上 0.000
芝コース通算85301.000 
ダートコース通算33001.000 
競馬場別実績
競馬場 1着 2着 3着 連対率 主な勝鞍
Longchamp(FRA)31201.000
中山11001.000
Saint-Cloud(FRA)11001.000 1999サンクルー大賞典
東京65101.000 1998NHKマイルカップ 1998ジャパンカップ
通算118301.000 

5代血統表
Kingmambo
1990 鹿
Mr.Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Miesque Nureyev Northern Dancer Nearctic
Natalma
Special Forli
Thong
Pasadoble Prove Out Graustark
Equal Venture
Santa Quilla Sanctus
Neriad
サドラーズギャル
Saddlers Gal
1989 鹿
Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason
Lalun
Special Forli
Thong
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Trevisa
Thong Nantallah
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