[解 説]
当Web siteでは漢数字の馬齢は旧年齢表記、算用数字の馬齢は満年齢表記
トウカイテイオーは1988年新冠の長浜牧場にて生まれた。父
シンボリルドルフは無敗で三冠を制した上に天皇賞、ジャパンカップ、有馬記念2回も勝った日本競馬史上に残る名馬。その父パーソロンをさらにさかのぼると、サラブレッド3大始祖といわれながら今や絶滅寸前といえるバイアリータークに求めることができる。母トウカイナチュラルはナイスダンサー産駒で未出走ながら、オークス馬
トウカイローマンの半妹という良血馬。6代母にダービー馬
スゲヌマが名を連ねている。そもそも
トウカイローマンに
シンボリルドルフを交配予定であったのが、
トウカイローマンが現役続行したために、その妹を交配することに変更したということである。
内村正則氏の持ち馬として栗東松元省一厩舎に入厩したトウカイテイオーは、父シンボルルドルフの愛称「皇帝」を継承した「帝王」と名付けられた期待を違わず、松元師によって「ダービーを取れる逸材」と見抜かれた。そこでダービーの行われる東京と同じ左回りである中京で初出走することになった。新馬戦は安田隆之騎手を鞍上に完勝。さらに京都のシクラメンSも勝って三歳競馬を終えた。
四歳は京都の若駒Sを叩いて、中山の皐月賞トライアルのオープンレース若葉Sに出走。ここも圧勝すると、「父をも越える名馬の誕生か」とファンは皐月賞で1番人気に支持した。弥生賞で評判の外国産馬
リンドシェーバーを破った
イブキマイカグラが当面の相手と思われた。トウカイテイオーは速い流れの中好位に身を置きながら、馬群を割るのに苦労した
イブキマイカグラを尻目に完勝。2着に父
シンボリルドルフのライバル、
ミスターシービー産駒シャコウグレイトが入りファンを喜ばせた。続くダービーでは大外枠20番に単枠指定されたが、ファンは迷うことなく断然の1番人気に支持した。有力視された
イブキマイカグラはNHK杯後に故障発生。結果は
レオダーバン以下に圧勝し、父に続く無敗のダービー馬が誕生した。しかしこのレースで骨折が判明し、三冠の夢は絶たれた。
五歳の春に復帰。盾取りを目指し、
シンボリルドルフの主戦岡部騎手を鞍上に大阪杯から始動した。直線で岡部騎手が軽く気合を入れただけで2着以下を突き離す圧勝。無敗の実績と血統、そしてこのレースぶりから天皇賞では1番人気に支持された。しかしここには前年の覇者
メジロマックイーンが出走していた。最強のステイヤーにはかなわず5着に敗れた。
その後再び骨折が判明、五歳秋は天皇賞にぶっつけで出走。しかし1番人気に支持されながら、出走メンバーが弱体化していたにも関わらず
レッツゴーターキンの7着とまったくいいところがなかった。続くジャパンカップは国際GIに認定されたこともあってか、過去最強の招待馬が出走してきた。そのため不調のトウカイテイオーでは荷が重かろうと5番人気に落ちた。しかし日本馬では最高の人気でファンはその潜在能力を見限っていなかった。トウカイテイオーは好位から抜け出すと、オーストラリア最強馬ナチュラリズムを激しい叩き合いで競り落し、見事にジャパンカップを手にした。この勝利があまりに強烈だったので、ファンは有馬記念で圧倒的1番人気に支持した。鞍上は騎乗停止中の岡部騎手から田原騎手に替わった。トウカイテイオーはスタートで出遅れ、後方に待機する展開となった。そのため他の有力馬も後方に控える展開となり、
メジロパーマーの逃げきりを許すことになってしまった。トウカイテイオーは11着に敗れた。実はゲート内で脚を滑らせ腰を痛めてしまったのである。
3度目の長期休養は長引き、復帰したのは1年振りとなる六歳の有馬記念であった。陣営はかつての鞍上岡部騎手に騎乗を打診したが、彼はその年の菊花賞馬
ビワハヤヒデを選び1番人気に支持された。トウカイテイオーは1年振りでは荷は重かろうと4番人気であった。鞍上には昨年の雪辱に燃える田原騎手を迎えた。トウカイテイオは道中斜行を重ねながらも、徐々に闘志を燃やしはじめ、直線で
ビワハヤヒデを捕らえると、これを半馬身抑えて優勝。1年振りのレースで奇跡的な勝利に大観衆は酔った。
その後天皇賞を目指して調整が続いたが、4度目の故障が発生。今度は復活することなく引退した。引退後は社台スタリオンにて種牡馬として供用された。産駒成績としては、
トウカイポイントが2002年のマイルチャンピオンシップに優勝した。ただしこの馬はせん馬で後継馬が得られないのが残念である。他には2003年の阪神ジュベナイルフィリーズでヤマニンシェクルが優勝。2000年の皐月賞でチタニックオーが3着に入っている。種付けシーズンを終えたその年の2013年8月30日、社台スタリオンステーションの馬房にて心不全を起こしてこの世を去った。享年25歳。自身を越える大物を輩出できなかったのは心残りであったろう。
日本古来の牝系に日本最強馬の血を受け次いだその魅惑的な血統背景、鹿毛の額に走る美しい流星、3度の骨折から復帰した不屈の闘志、パドックを周回する時によく目立つハイヒールをはいたような危なっかしい独特な鶏跛歩様、全てがファンを魅了したトウカイテイオーは1995年顕彰馬に選定された。
2001年8月19日筆
2003年8月9日加筆
2022年4月6日加筆